学級通信の底力 耳からの情報を聞き取るのが苦手な生徒たち
ときおり「口で言っただけでは話が伝わりにくい」と感じる生徒に出会います。学校では、1日の行動についてほとんどの連絡が口頭で行われます。話を聞き取ることができない生徒たちにしてみると「今日、これから自分はどんなことをしなければいけないのか、今日なにがあるのかわからない」ことになります。今、自分の置かれている環境がわからないのです。「学校が怖い」「人が怖い」という漠然とした不安感は「自分が居る環境がわからない」ことがかなり影響しているように感じます。
この春、担任をもつことになった新入生の経歴を調べると、小学校あるいは中学校で年間30日以上欠席していた生徒が7割を越えていました。中学校へ1日も行ってない生徒も居ます。「全日制に行きたかったが、欠席数が多すぎて受け入れてもらえないし、たとえ行っても続ける自信がない」という生徒たちが定時制に入学してきます。「定時制は基礎から教えてくれるから」と再起をかける生徒も多数居ます。しかし、ハードルは高く「夕方から始まって、9時に終わる授業」、人数が少ないとはいえ「苦手な集団生活」に適応しなければなりません。担任として1年目の課題はこの生徒たちを定時制という特殊な環境になじませること、軟着陸させることでした。
「動物は自分を取り巻く環境を把握することができれば、安心し落ち着いた行動ができます。人間だって同じはずである」と考え、そのためにするべきことは生徒に 「定時制という環境」「学校の姿勢」「HRの運営者である担任の考え方」「毎日するべき行動」「近日中の行事」を毎日確実に伝えることでした。
5分足らずのSHRで伝えるには情報量が多すぎますので毎日「学級通信」を発行し続け、一人でも多くの生徒をつなぎ止めておいて、脱落しそうになる生徒を個別指導で引っ張り上げることにしました。生徒たちの「今度こそ」という意気込みを頼りに軟着陸させようとしたのです。
この学級通信の効果は私が想像した以上のものがありました。5月11日現在「入学以来無欠席」が続いています。11日に保護者の方と話す機会がありました。皆さんから「中学校には行けなかったのに、今は楽しそうに通学しています」「積極性がでてきました」「家庭内でも素直になったように思います」と嬉しい話を聞くことができました。
過去の担任でも学級通信は作っていましたが、保護者に学校でのできごとを伝えるのが主な目的で、ほとんど春夏秋冬の季刊になっていました。自分の中に「口頭で連絡すれば済むことだし、担任の考えや人柄は毎日接しているからわかるだろう。わざわざ時間を割いて学級通信をつくるのは無駄である」という考えがあったからです。
今私は時間をかけて学級通信を作っています。


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