入学直後の不登校多発
不登校生徒の多さ今年(2001年)は、少子化の影響を受け、普通科は36人/学級、専門学科は28人の新入生を迎えた。生徒の話を聞くと「ほとんど受験勉強しないで」入学してきたとのことで、学力の低さは否定できない。五月の連休明けから問題が多発することになる。中でも集団になじめない生徒たちの多さには驚かされた。次の表は6月上旬にまとめた集団不適応生徒の一覧である。
不登校生徒の状態
A君
不登校 4割条項の適用を申請したい。現在カウンセリングを受けるように指導中。
Bさん
躁鬱傾向がある。登校するが授業に出ることができず、トイレで過ごすことが多い。クラスに入ることができず、休み時間もトイレの前で過ごしている。家へ帰ると積極的な面をみせるとのことだが、学校では話し合いのとっかかりもつかめない。カウンセリングが必要と思うが、そこまで持っていく見通しがもてない。もうじき法定時数の2割を欠席する。
C君
学校へ来たり来なかったり。朝は出勤する母親と共に家を出てくるが、途中で引き返して家へ戻り、私服に着替えて出て歩いている。母親は学校へ行ってないのを知らないことがある。欠席がちで、現在法定時数の一割程度の欠席率。
D君不登校により原級留置となった生徒
引きこもりに近い状態。家へ電話すると「大丈夫」と答えるが、まったく出てこない。祭りなどにでかけていることがあり、昨年の同級生と話をすることもあるが、それ以外は家に引きこもっているようだ。欠席数がもうオーバーしている。4割申請という状態ではない。退学するような指導をすることになると考えている。
E君
登校はするようになったが、無断早退をする。授業中はほとんど寝ている。中間考査はほとんど白紙である。実技教科では態度が悪いと指摘を受けている。欠席時数がオーバーするのは時間の問題。家庭の問題もあり同情すべき点は多いが、困難さを感じるところである。毎日登校するようになったのは学校に残りたいという意志の現れでもあると考えられる。
Fさん
不登校、音信不通で親とも連絡が取れない。今後のことを話したくても話せない状態にある。もうすぐ欠席時数がオーバーする。家には帰っているようだが、いても電話に出ないようだ。以前F先生に家に寄ってもらって連絡がとれたが、また元に戻ってしまった。
※4割条項; 病気特例で、法定時数の4割まで欠席しても単位を認定する。
ここにあげた生徒たちは、2学期はじめまでに事実上学校から姿を消した。一学期末には、まったくノーマークだったG君が「学校生活に目標を見いだせない」という理由で退学の意志を伝えてきた。彼もまた9月には学校を去った。
何が原因かこれらの子供たちに共通にあてはまる原因は見つけることができない。BさんとD君は人間関係をつくるのが苦手なことが原因していると考えられるが、他の生徒は学校外に友人がいて(良し悪しは別にして)交友関係がある。A君は中学校時代ほとんど登校していなかったが、バスケットボールが好きで、合格が決まると入学式の前からバスケット部で活動をしていたほどである。彼の入学から退学に至るまでの経過は不登校問題の不可解さを表す典型的な例である。
A君の場合中学校時代より不登校でほとんど登校していなかった。バスケット部主将だった兄にあこがれ、バスケットをする事を目標に本校に入学してきた。親は入学させてもらえるとは思わなかったと言っていた。
これまでの経過中学時代に病院でカウンセリングを受けようとしたが、一度面接を受けた後治療を拒否、変わって母親が二年間通い続けた。入学後の状況3日通って不登校が再発した。4月には玄関まで出てくるが、どうしても登校できないという日が続いた。親には「環境に慣れることからはじめましょう。部活動のためだけでもだけでもいいから出てくるようにしてください」と伝えた。二ヶ月近く待ったが、一進一退はあるものの、結果的に見れば好転しなかった。6月に入り、欠席時間数が限界に近づき「多少無理をしても出てくるように。」という指導をしたところ二日ほどがんばったが反動でまったく出てこなくなった。
本人の意思学校へ来たいという意志は強く持っており、何度も挑戦するが挫折する。「もう少しがんばって出てこい。」というと頷いて、次の日はしっかりでてくる。6月2日には、2ヶ月ぶりに朝から登校し、下校時間まで学校にいた。また、家族と外出するときは必ず制服を着用して出かけるほど、学校に対する愛着が強かった。宿泊研修の話し合いには積極的に加わり、楽しみにしていた。これを契機に変わる可能性にかけてみたが、寸前で再び登校できなくなった。4割条項を適用してもらったが、「現在の状態では、見通しがもてない。家族も協力して、本人が治療を受けるような状態になることが必要」という条件が示された。
これについて両親から「今の状態では容易ではないが、必ず診療を受けさせるので、時間を下さい」という返事をもらった。
しかし、本人は「カウンセリングを受けてまで行きたくない」という意志を示し、退学する決意をした。本人が言うには、「友人関係に問題があるわけではないし、先生が嫌いなわけでもない。ただ学校という雰囲気がだめでどうしても入ることができない。」とのことだ。両親は苦しみ、特に父親は息子を理解できず、怠学ではないかという疑念をいつも拭えず,そのことで息子を責めては後悔していたようだ。その、両親が「よその子供たちと同じようにと願うことが息子に負担になるようだから、今は待つことにしました」と退学を受け入れた。たまたま、学校を訪ねてきた彼の兄は「引きこもりじゃないだけ良いと考えている」と言った。「思春期が過ぎれば直ると思うよ」と答えたが、それは「そうあって欲しい」という私の願いだった。
気になる行動、集団から逃避する生徒たち
(1) 宿泊研修不参加者が10名を越えた。家の都合、健康上の問題を理由に欠席し た生徒が6名、 不登校と経済的理由を加えるとそれだけで12名になる。
(2) 授業中トイレに立つ生徒が多くなった。教室に座り続けることに耐えられなくなってきている。
(3) 簡単に退学してしまうのは一年生の揺れ動く時期だけかと思っていたが、今年は2年生でもすでに3名が姿を消した。新たに不登校状態に陥った生徒が一名でてきた。退学者のうち2名は見学旅行を目前にしてのことであり、何の兆候も感じられなかった。
(4) 3年生になってから通信制への転学を決意する生徒も出ている。彼らはいったい何を求めているのか。別に不本意入学が原因しているわけではない。学校が嫌いなわけではない。それどころか、なんとか、みんなと同じように学校生活を送りたいと強く希望しながら、それができずにやめていくように感じる。
A君の、退学手続きの際、母親から「来年度以降も不登校の子供を受け入れてほしい」という意志が伝えられた。「うちのはだめでしたが、高校へ行ってからがんばろうと思ってるこどもがいる。不登校の子供を抱える母親たちは高校進学をとても心配しているからぜひ受け入れてほしい。」ということだった。確かに中学校からの調査書を調べ直すと、不登校傾向の生徒がたくさん入学してきている。彼らの中には高校入学を契機に立ち直り、しっかりした学校生活を送っている生徒も多い。しかし、適応できない生徒の方が多い。「今度こそ」という決意を持って入学してきた生徒たちが二度目の挫折をする。その無念さ、挫折感は大きなものだろう。残念なことに、現在の本校の体制では、一人一人の生徒に十分目が行き届き、会話ができるという状態ではない。集団ではなく、個人としての自分に手をかけて欲しい生徒、先生に相手にしてもらいたい生徒が増えてきた中で、教育システムが破綻をきたし始めている。
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